なぜ実名報道をするのか?

なぜ実名報道をするのか?

京都アニメーションの放火事件などで改めて実名報道がクローズアップされています。
なぜ報道各社は実名報道にこだわっているのか。
実名報道は報道そのものを揺るがす大きな意味合いが含まれているので解説します。

実名報道の意味とは

新聞

ニュースというものは全て「人」が関与しています。
事件では容疑者、被害者。
政治では政治家。
経済では経営者や労働者。
天災でも被害者がいます。
ニュースには必ず人が絡みます。
だから人を報じるのがニュースと言えます。
その人が誰なのかが非常に重要なのです。

事件が起きました、犯人はどんな人なのかは大事です。
どんな人でどんな動機でどのような暮らしで犯行に至ったかを知ることが防犯につながります。
そして大切なのが怒りです。
事件の被害者になればその罪に対しての関心を強く持ちますが、そうでない大衆は関心がありません。
自分に近く感じるから関心を持ちます。
アフリカで多くの人が亡くなっても日本人は関心を持ちませんが、近所で1人殺されると関心を持ちます。
本来は等しく義憤を持つべきですが残念ながら人はそうでありません。
つまり匿名だと人は関心を持たないのです。

阪神大震災の実名報道

1995年に起きた阪神大震災では6434人の方が亡くなりました。
震災当初の報道でNHKのアナウンサーが被害者の名前を読み上げたのですが、感極まって涙ながらに読み上げたのが話題となりました。
なぜ名前を報じるかというと人こそがニュースの原点であるということもさることながら、災害の場合、遺族は報道によって身内が被害にあったことを知ることが多いからです。
特に友人となると報道でなければ知れないということがあります。

 

京都アニメーションの被害者の名前をなぜ公表したか


Amazonより

被害者だからです。
本人は何も悪くありません。
誰が殺害されたかによって悲しむ方は多くいます。
報じる意味は多いにあります。

こう考えてみてください、今回の事件が「会社」に放火されたとだけ報じられたら、ここまで大きな扱いになったでしょうか?
ならなかったと思います、「涼宮ハルヒの憂鬱」など数々の名作を生み出したあの京都アニメーションだから世間の関心を集めたといえるところはあると思います。

同じ規模の死者が出た川崎の簡易宿泊所の放火事件はここまで世間の関心を集めませんでした。
それは言いにくいことですが、被害者の違いという点もあるではないかと考えます。

 

何を持って名前を伏せるのか

名前を報じられることで社会的損失が生じます。
そこを考慮して名前を伏せますが、多くが容疑者です。
未成年は法律によって保護されるので名前はでません。
あとは軽微な罪です。
事故でも人身事故であれば名前がでますが、スピード違反では出ません。
これが原則です。
では京都アニメーションでは何が問題となっているのでしょうか。

名前を公表してほしくないという遺族の意向

今回は名前を出して欲しくないという遺族の気持ちが事前に示されていたのに公表されたということです。おそらくはそっとして欲しいということだろうと推測しますが、遺族が公表してほしくないと言えば公表しないのは当然だと思います。ご遺族にも生活がありますから。

しかし、遺族の意向を聞いてから公表すべきだという原則にすると報道というものが低下すると危惧します。例えば前述のとおり、天災で死者が出た場合、遺族が許可を出すまで名前が出ないということになります。遺族と連絡がつくとも限らない上に決定権者は誰だとか運用上に様々な問題が生じます。

そうなると被害者は全て匿名になる恐れがあります。
親戚などは一刻も早く安否を知りたくても知れないことになりますしデメリットが多くなります。

問題の本質はメディアスクラム

遺族が実名の公表を嫌がるのは過剰な取材が原因だと思います。
これは大きな問題なのでメディアは過剰には取材しない心構えが必要です。
この問題はまた別記事に譲ります。

 

 

ニュースな言葉カテゴリの最新記事